著者について

 著者の鍋島泰(1926-2010)は大正15年10月5日に、志摩町和具に鍋島医院の長男として生まれ、昭和34年から鍋島医院を継いで、長く町のお医者さんとして多くの人を診つづけました。温暖な海辺の町は長寿な土地柄で、祖父母も父母も子も孫もと、一家中が診てもらった家族は少なくありません。その当時の鍋島医院は、和具観音堂に近い中心地区にあり、自宅に隣接した医院の待合室にはいつも患者さんであふれていました。また、頼まれれば夜中でも往診に出かけてくれる頼りになるお医者さんでした。口数は多くないのですが、暖かい人柄は多くの人に信頼され、家庭においては3女に恵まれたすこぶる愛妻家でもありました。
地元の学校医を長く勤め、特に三重県立水産高校では校医と共に、船舶衛生管理者資格を得るための講習も担当して地元人材の育成に努めました。その活躍などにより、平成14年には勲五等瑞宝章を受勲しています。
 医学の最新の知見を学ぶことにも熱心だった彼が、方言研究を始めたのは、友人の浜口幸保氏の熱心な勧めがきっかけだったようです。もともと、一度勉学のため地元を離れて、戻ってきてからは多くの患者の話を聞きつづけた彼には、地元の言葉への興味関心が深くあり、今記録しておかないと残らないのではないかという危機感もあったのです。そして、いざ始めるとなると、医学を学ぶのと同様の科学者らしい徹底した研究姿勢で臨んでいきました。詳しくは「和具の方言について」のページをお読みください。